今回は、フィッツマジックのフィッツマジック特集の後編として第2週フィラデルフィア・イーグルス戦のプレーを振り返ってみたいと思います。前回の内容を前提にしている部分もあるので、もしよろしければ前回の記事もお読みいただけると嬉しいです!
(用語の使い方等は、チームや人により異なることもあるので、参考程度にお願いします。)
オープニングプレーでまさかの75ヤード・タッチダウンパス!
今回は2プレーご紹介しようと思ってるんですが、両方ともNFL公式アカウントのハイライト動画内にあるので、適宜参照ください。
4 touchdowns.
Over 400 yards passing.
And a WIN over the defending champs.Ryan Fitzpatrick = FITZMAGIC! 🔥🔥🔥 #PHIvsTB #GoBucs pic.twitter.com/VrHskO4NFg
— NFL (@NFL) September 16, 2018
まずは、動画の最初のプレーについて掘り下げてみます。
なんと、キックオフ後のオープニングプレーでいきなりタッチダウンパスになってしまうんです!野球でいう、先頭打者初球ホームランみたいな感じでしょうか。
第1Q残り15:00
バッカニアーズ陣25ydsから1st&10が
QB14フィッツパトリックからWR11デショーン・ジャクソンへの75ydsタッチダウンパスです。
前回の記事をお読みいただいた方は、「またポストか!」と思われるかもしれませんね。しかも、逆サイドを見ていただくとインなので、そういう意味でも共通点があります。
とりあえず、図にしてみましょう。
プロIから左へのプレーアクションからFL(フランカー・Z)がポストで、SE(スプリットエンド・X)がイン。パスプロテクションは、TE(タイトエンド・Y)・FB(フルバック)・TB(テールバック)も含め、7人でQBを守るという意味ではマックス・プロテクションですね。
で、パスコースに関して、前回の記事でどんなことをやってきていたかというと、斜めへのルート(コーナーやポスト)と横へのルート(アウトやイン)を使って縦に2レベルつくるということでした。前回の記事の1プレー目はコーナーとアウトで、3プレー目はポストとイン(Mills/Pin)でした。比較するために前回のパスプレー2プレーと今回のプレーを並べてみましょう。
赤・青・紫がそれぞれ、斜め系ルート・横系ルート・2レベルと対応させていますので、見比べてもらうと、幾何学的な関係がわかるかなと思います。コンセプト的には似たようなプレーですよね。(まぁ実際は今回のプレーはSEのインが結構浅いんですが、わかりやすいように多少誇張しました。)
一方のイーグルスディフェンスですが、初っ端から結構攻めてきていて、コーナーバック・ブリッツを入れてきました。結果的にこれがあだとなってしまった形ですね。
パスラッシュは、ブリッツサイドのDLがオフェンスから見て右にスラントしてCBが左サイドからブリッツしたり、SLBがLOSに上がったりしてます(SLBは多分TEにマッチアップ)。が、いかんせんマックス・プロテクションだったのでたいしてプレッシャーはかからず。
パスカバーは、CBがブリッツしたので、左のSEにはFSがインバートしてきてマッチアップする。これにより、SSが実質1ハイセイフティーになるんですが、右FLのスラントをカットしにいったのか、大きく上がってしまって、あっさりと裏を取られる。SSがディープを守らなくて良いカバー0的なアサイメントだったのか、それともミスなのかはわかりませんが、いずれにせよフィッツパトリックはSSのその動きを見逃さず、ポストに投げる。最終的にFLがCBを引き離すことに成功し、パスが通りましたね。
逆に言うと、SSが結果的に上がってはしまいましたが、FL(ジャクソン)に対しては実質SSとCBのダブルカバーなわけです。反対側のSEはFSとの1対1で、しかも比較的マンツーマンに強いインなので、そっちに投げた方が良いような気もしないでも無いですが…ダブルカバーされていてもパスが通ってしまうのが、フィッツマジックです(笑)
まぁプレーアクションの時に、まずはセイフティーが引っかかっているか見て、引っかかってたらディープに投げる、そうじゃなかったらLBが引っかかるか見て、引っかかってたらセイフティーとLBの間のルートに投げるみたいなHi-Loリードをしたりするみたいなんだけど、それをやった結果なのかもしれません。プレーアクションして振り返ったらSSが上がってきていたので、ディープのポストに投げたみたいな。
いやぁ~1stプレーから駆け引き満載で面白いですね!
13ヤードのパスが75ヤードタッチダウンパスになるフィッツマジック
次はこちらのプレーについて取り上げようと思います。
第2Q残り4:51
バッカニアーズ陣25ydsから1&10が
フィッツパトリックからTE80 O.J.ハワードへの75ydsタッチダウンパスです。
(動画の0:41頃から)
バッカニアーズオフェンスは右3×1からで、ディフェンスはカバー3での対応ですかね。プレーとしてはこんな感じ。
これはこれまで取り上げてきたプレーとはちょっと傾向の違うパターンですね。
黄色で囲った部分のようにに、インとかを使って2レベルつくるコンビネーションは、文字通りLevelsコンセプトと呼べれることがあります。LBの前後を挟むような形になるので、特にゾーンディフェンスに対して使われたりしますね。LBが浅い(手前の)方のインが気になって自分のゾーン深くまで下がらなければ、深い(奥の)方のインが通るといった具合です。
で、インのコンビネーションとしてはLBを挟めるということですが、このイン(やアクロスも含む)のようにフィールドを横切るルート単体で考えた場合、これがなぜ便利かというと、シームに投げ込めるチャンスが複数回あるということだと思います。(その他のメリットは、マンツーマンだとディフェンスを引き離しやすいとか、QBが比較的投げやすい・レシーバーが捕りやすい等。デメリットは進行方向先のディフェンダーからの即タックルとか、DLにパスカットされることがあるとか。)イメージとしてはこんな感じ↓。
このように、ディフェンスが4-3のカバー2の場合には3回投げるチャンスがあることがわかります。(今回のプレーは3×1からだったりカバー3だったりしますが、見やすいかなと思ってこの図は2×2からにしました。)
で、何が凄いって、今回もそんな感じで間に投げるのかな~と思って見ていると…まさかのMLBの頭上を飛んでいくんですね(笑)
しかもタッチダウンになってしまうという。
タッチダウンになった背景には、ハワードがCBのタックルをかわせたというのももちろん大きいですが、それだけではなくて、シングルサイドのレシーバーだったWR12クリス・グッドウィンがFSをブロックできたのも大きいと思います。結果的にサイドライン際を駆け上がってのタッチダウンになりましたが、ひょとしたらハワードは取った瞬間にこれがあるていどイメージできていたかもしれません。というのも、シングルサイドのレシーバーは、ルート的にはアウトなんですが、このヤードはハワードのレベルと合わせたデザインになってるんです。
Tripsサイドの#1と#2のインが同レベルで、#3のインとシングルレシーバーのアウトが同レベルなんですね。ということは、#3にパスが通った場合、シングルレシーバーをリードブロッカーにするようにして、さらなるゲインを期待できるということだと思います。これがわかっていたので、ハワードは、パスをキャッチした瞬間にすぐ縦に上がるのではなくて、CBを外にかわしたのかもしれません。これが例えば、シングルレシーバーがフェードやポストのようにディープにいくルートだとこうはできませんよね。ラン・アフター・キャッチ(RAC)をデザインする、とはこういうことなのかもしれません。
逆に言うと、スカウティングをするときは、オフェンスのプレーや選手の違いによって、ラン・アフター・キャッチがどう違うかまで研究する必要があるのかもしれません。取ったらすぐスクリメージラインと垂直に上がるのか、今回のようにすぐには上がらないのか、はたまたロス覚悟でチャンスがあると思えば下がってでも外をまくろうとするのか…等々。
と、いうことで、MLBの頭上に投げてもパスカットされないのがフィッツマジック。しかもそれがタッチダウンになってしまうのも、フィッツマジックでした(笑)
前篇・後編合わせて5プレーについてご紹介しました。案の定、フィッツパトリックの紹介というよりも、プレーの紹介になってしまいましたが(笑)解説といえるほど立派なものではないですが、お読みいただきありがとうございました。
今回の話は以上です!
それではまたっ!